
【2024年4月、AVEVA PDMSのサポートが終了しました。】PDMSを長年使ってきた現場では、後継のAVEVA E3D Design(旧称 Everything3D)への移行か、Intergraph Smart 3Dへの乗り換えか、判断を迫られているケースが増えています。
判断軸は単純な「機能の優劣」ではありません。ライセンス費用・既存資産の引き継ぎ・カタログデータの再構築・ユーザーの再教育、これらが組み合わさって移行コストを決定します。
本記事では、Smart 3D向け専用アドオン「shinsei-3d」を開発する辰星技研株式会社の現場視点から、PDMS/E3DとSmart 3Dの違い、移行で発生する作業負荷、コストを下げる具体策を解説します。
PDMSとは|AVEVAのプラント配管3D-CADの全体像
PDMSの主な機能(モデリング・干渉チェック・自動図面生成)
PDMS(Plant Design Management System)は、AVEVA社(現Schneider Electric傘下)が開発したプラント設計向けの3D-CADシステムです。配管・機器・構造・電気計装といったプラント全体のモデリングを統合的に扱える点が特徴で、世界の大手プロセス・電力・石油化学企業の大規模プラントプロジェクトで広く採用されてきました。
主な機能は次の4つに整理できます。
| 機能カテゴリ | 内容 |
|---|---|
| モデリング | 配管・機器・構造・電気計装などの3Dモデル作成 |
| チェック・レポート | 干渉チェック、属性チェック、各種レポート出力 |
| 自動図面生成 | 配置図・アイソメ図(ISO図)・スプール図・サポート詳細図などの自動作成 |
| データベース統合 | 複数ユーザーが同時に同じプロジェクトを扱える共有DB |
PDMSが選ばれてきた理由|大規模プラント設計の事実上の標準
オイル&ガス・石油化学・発電プラントといった大規模案件で、PDMSは長く事実上の業界標準として使われてきました。理由は、複雑な配管経路を扱う際の操作の素直さと、PDMS専用言語「PML(Programmable Macro Language)」による高いカスタマイズ性です。
各社が独自の社内標準(記号体系・寸法ルール・カタログ仕様)を持つプラント設計の現場では、汎用CADでは対応できない細かい要求を、PMLで作り込めることが採用の決め手になっていました。
PML|PDMS専用言語によるカスタマイズ性
PMLは、ユーザーがPDMSの機能を拡張するためのスクリプト言語です。社内標準に合わせた図面テンプレートの自動生成、配管属性の一括処理、特殊な干渉チェックロジックなど、長年運用してきた企業ほど大量のPML資産を蓄積しています。
このPML資産が、後述する「移行時に最も悩ましいポイント」になります。Smart 3Dへ移行する場合、PMLで作り込んだロジックをそのまま動かすことはできません。
PDMSサポート終了とAVEVA E3D Designへの移行
2024年4月のサポート終了で何が変わったか
AVEVAは、2024年4月1日をもってPDMSの販売・サポートを終了しました(AVEVA公式)。既存ユーザーが既存ライセンスでPDMSを使い続けること自体は当面可能ですが、新規バグ修正・新OS対応・テクニカルサポートはAVEVAから提供されません。長期運用には不安が残るため、後継ソフトや他ソフトへの移行を検討する企業が増えている状況です。
後継ソフト・AVEVA E3D Designの特徴|統合データベースと全工程対応
AVEVAがPDMSの後継として推進しているのがAVEVA E3D Design(旧称 Everything3D)です。「E」は「Everything」の頭文字で、配管・機器・構造・電気計装・HVAC・サポート設計といったプラント設計の全領域を1つのプラットフォームで扱える点が打ち出されています。
| 項目 | E3Dの特徴 |
|---|---|
| データベース | 独自データベース「DABACON」採用。OracleやSQL Serverといった汎用DB管理が不要 |
| 同時編集 | 大規模データに対し、複数ユーザーの同時アクセスをサポート |
| 点群データ | 3Dレーザースキャナーの点群データを既存設備の改修プロジェクトで活用可能 |
| クラウド連携 | AVEVA CONNECTによるクラウドベースのプロジェクト共有 |
PDMSとAVEVA E3D Designの互換性|既存データはそのまま使える
AVEVA E3D Designの大きな特徴は、PDMSとの高い互換性です。同一のDABACONデータベース・データ管理技術を採用しており、PDMSで作成したモデルデータをE3Dでそのまま開くことができ、PMLによるカスタマイズも基本的に引き継げます(AVEVA公式ドキュメント)。
このため、「PDMSを使い続けたい」というニーズと「サポートのある環境に移したい」というニーズの折衷案として、AVEVA E3D Designへの移行を選ぶ企業は少なくありません。一方で、ライセンス費用が高水準で据え置かれている点が課題として残ります。
PDMS/E3DとSmart 3Dの違い|選定の判断

ここからが本題です。「PDMS/E3Dを継続するか」「Smart 3Dへ乗り換えるか」を判断するうえで、両者の違いを実務目線で整理します。
| 比較項目 | PDMS/AVEVA E3D Design | Intergraph Smart 3D |
|---|---|---|
| 開発元 | AVEVA社(旧PDMSは2024年4月サポート終了) | Hexagon(旧Hexagon PPM/継続開発中) |
| データベース | DABACON(E3D)/専用DB(PDMS) | Microsoft SQL Server(Oracleにも対応) |
| カスタマイズ言語 | PML(PDMS/E3D専用言語) | VB.NET/C#/カスタムコマンド |
| カタログ管理 | プロジェクト単位で構築 | Smart Reference Data(共通カタログ)+プロジェクトカタログ |
| ライセンス費用 | 高水準(変動) | 高水準だが構成次第で柔軟 |
| 国内シェア(プラント業界) | 約31%(合算)で高位だが減少傾向 | 約4%(PDS後継としての位置付け) |
※国内シェアはENN-net エンジニアリングITアンケート2023(n=57)に基づく。AutoCAD Plant 3D(23%)・EYECAD(21%)が中価格帯で安定的に成長している点も補足情報。
開発元・思想の違い|AVEVA vs Hexagon
PDMS/AVEVA E3D DesignはAVEVA社の製品で、データベース統合と全工程対応を強みに発展してきました。一方、Intergraph Smart 3DはHexagon(旧Hexagon PPM)の製品で、Microsoft SQL ServerまたはOracleを基盤とした標準的なRDB構造と、ルールベースのモデリングが特徴です。
どちらも「世界の大規模プラント設計を扱える基盤」という意味では同等の実力を持ちますが、操作思想・カスタマイズ手段・周辺ツールの考え方が根本的に異なります。
ライセンス費用の差|移行の主要ドライバ

辰星技研の現場経験から見ても、PDMS/E3DからSmart 3Dへ移行する企業の最も多い理由はライセンス費用です。機能面ではPDMS/E3Dも非常に優秀で、機能不足を理由に移行するケースは多くありません。
「機能は十分。ただ、長期的なライセンスコストを下げたい」という経営判断が、移行の主要ドライバになっているのが実情です。
※費用感はライセンス形態・契約規模・保守契約により変動します。具体的な見積もりは各ベンダーへの確認が必要です。
カスタマイズ性とカタログ管理の方法
PML資産を持つ企業にとって、Smart 3Dへの移行で最も気になるのがカスタマイズの再構築です。Smart 3DはVB.NET/C#でカスタムコマンドを開発する仕組みで、PMLとはアーキテクチャが異なります。
カタログ管理についても、Smart 3DはSmart Reference Data(共通カタログ)とプロジェクトカタログを組み合わせる構成で、社内標準を全社共通で管理しやすい一方、初回構築には相応の工数がかかります。
PDMS/E3DからSmart 3Dへの移行で発生する2つの負荷
実際にPDMS/E3DからSmart 3Dへ移行する場合、現場で最も時間がかかるのは次の2つの工程です。辰星技研が複数のプロジェクトで支援してきた経験から整理します。
①カタログデータの再構築|最大の工数源

PDMS/E3Dで蓄積してきたカタログ(配管材質・継手・バルブ等の標準仕様)は、そのままSmart 3Dへ持ち込むことができません。Smart 3Dのカタログ構造に合わせて、社内標準を反映したデータを再構築する必要があります。
特に大規模プラント設計を行ってきた企業ほど、カタログ点数が膨大で、再構築工数が見えづらいのが課題です。各企業で管理されているカタログを正しくSmart 3Dの構造に流し込むには、データクレンジングと整合性チェックを並行して行う必要があります。
| 工程 | 主な作業内容 |
|---|---|
| カタログ抽出 | PDMS/E3Dから配管材・継手・バルブの仕様を抽出 |
| データクレンジング | 表記揺れ・属性欠損の修正、命名規則の統一 |
| Smart 3D形式への変換 | グローバルカタログ・プロジェクトカタログへの分配 |
| 整合性チェック | 既存モデルとの不整合がないか検証 |
②ユーザー教育|操作感の違いとスキル習得期間
PDMS/E3Dを長年使ってきた設計者にとって、Smart 3Dへの移行は「操作感の違い」が最大のストレスになります。コマンド体系・モデリング手順・図面出力フローが異なるため、習熟まで一定の期間が必要です。
ベテラン設計者ほど操作の癖が体に染み付いており、「PDMSなら数秒で終わる作業がSmart 3Dでは時間がかかる」と感じるフェーズが必ず発生します。この移行期間中の生産性低下を、どう設計に織り込むかがプロジェクト計画の鍵です。
既存データを資産として活かす方法
カタログ再構築・ユーザー教育、いずれも「ゼロから作り直す」発想だと工数が膨らみます。既存の資産をどう活かすかが、移行コストを下げる最大のポイントです。具体的には、PDMS/E3Dに近い操作感を再現するアドオンツールの活用が現実的な選択肢になります。
移行コストを下げる選択肢|shinsei-3dアドオンの活用
辰星技研が開発・販売している「shinsei-3d」は、Smart 3D向けの専用アドオンツール群です。PDMS/E3DからSmart 3Dへ移行する企業向けに、特に効果を発揮するのが次の機能です。
shinsei-3d主要アプリ別の作業時間削減率|移行後の効率化レバー
PDMS/E3DからSmart 3Dへ移行した後、shinsei-3dの17アプリは工程ごとに具体的な削減率で効果を発揮します。代表的なアプリの削減率は次のとおりです。
| 工程 | Smart 3D標準 → shinsei-3d 併用時の削減率 |
|---|---|
| アイソメ図サポート情報の自社仕様付与(AddSupportAttach) | 約83%削減 |
| 配管図面ラベルの位置整理(AlignLabel) | 約90%削減 |
| 配管図面の尺度自動設定(DwgSupportScale) | 約50%削減 |
| 配管カタログ・スペック管理の統合(Catalogue&Specification) | 不整合の自動検知でレビュー工数を構造的に圧縮 |
shinsei-3d公式サイトでは、17アプリ全体の累積で最大68%の作業時間削減を公表しています(shinsei-3d公式サイト)。移行直後の生産性低下を緩和し、PDMS/E3D時代と同等以上のスループットへ早期到達するためのレバーになります。
※プロジェクト規模・配管点数・作業環境により変動します。
PDMS/E3Dと同じ操作感をSmart 3Dで再現する仕組み
shinsei-3dの設計思想の中核は、PDMS/E3Dユーザーが慣れ親しんだ操作感をSmart 3D上で再現することです。具体的には次の3つの効果が現場で実感されています。
| メリット | 効果 |
|---|---|
| 既存データの活用 | PDMS/E3Dで培った資産を捨てずに済む |
| 作業時間の削減 | カタログ再構築・モデル変換の工数を圧縮 |
| 操作感の継承 | PDMS/E3D相当の感覚でSmart 3D配管設計が可能 |
ユーザー教育期間の短縮にも効果があり、移行プロジェクトのリスク要因である「ベテラン設計者の生産性低下」を緩和できます。
移行プロジェクトの進め方|実務的な3ステップ
ステップ1: 現状PDMS/E3D資産の棚卸し
最初に行うべきは、自社のPDMS/E3D資産の棚卸しです。具体的には次の3点を整理します。
- モデルデータ: 進行中プロジェクト・完了プロジェクトのモデル数とデータサイズ
- カタログ: 社内標準の配管仕様書・記号体系・命名規則
- PML資産: 過去に作り込んだ自動化スクリプトとその利用頻度
棚卸しの段階で「使われていないPML資産」「重複したカタログ項目」を発見できれば、移行スコープを絞り込めます。
ステップ2: 並行運用期間の設計
PDMS/E3DとSmart 3Dを一夜で切り替えるのは現実的ではありません。多くの企業は、進行中プロジェクトはPDMS/E3Dで完遂し、新規プロジェクトからSmart 3Dを採用する形で並行運用期間を設けます。
この期間にカタログ再構築・ユーザー教育・カスタムコマンド開発を進めるのが定石です。並行運用期間の長さは、プロジェクト本数とライセンス費用の兼ね合いで決定します。
ステップ3: カタログ再構築とユーザー教育の優先順位
カタログ再構築とユーザー教育は、どちらも工数が大きく、同時並行で進める必要があります。優先順位としては、次の順で着手するのが効果的です。
| 優先度 | 取り組み |
|---|---|
| 第1優先 | 直近プロジェクトで使う配管材・継手のカタログ整備 |
| 第2優先 | 主要設計者へのSmart 3D操作トレーニング |
| 第3優先 | 図面テンプレート・カスタムコマンドの開発 |
| 第4優先 | 全社カタログ・PML資産の段階的移行 |
shinsei-3dのようなアドオンを活用すると、第1優先・第3優先の工数を大きく圧縮できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. PDMSは今すぐSmart 3Dに移行すべきですか?
必ずしも今すぐではありません。既存PDMSライセンスで進行中プロジェクトを完遂しつつ、新規プロジェクトの判断としてSmart 3DかE3Dを比較検討するのが現実的です。サポート終了による即時の業務停止リスクは限定的ですが、長期的なライセンス戦略は早めに決める必要があります。
Q2. 既存PDMSプロジェクトはそのまま継続できますか?
現行のPDMSライセンスをお持ちであれば、既存プロジェクトを継続することは技術的には可能です。ただし、新OSへの対応やバグ修正がAVEVAから提供されないため、長期運用にはリスクがあります。重要プロジェクトでは、移行ロードマップを並行して整備することをお勧めします。
Q3. PDMS/E3DとSmart 3D、コスト的に有利なのはどちらですか?
ライセンス費用は契約形態・規模・保守体制により大きく変動するため一概には言えませんが、辰星技研の現場経験では、長期的なTCOで Smart 3Dを選ぶ企業が増えています。ただし移行初期にはカタログ再構築コストが乗るため、3〜5年スパンでの試算が必要です。
Q4. PDMS/E3DからSmart 3Dへ移行する際、配管データはどこまで引き継げますか?
モデルデータについては、SIO変換すれば配管経路・属性情報をある程度引き継げます。一方、PMLで作り込んだ自動化ロジックはそのまま動かないため、Smart 3Dのカスタムコマンドへの再実装が必要です。
Q5. PMLで作ったカスタマイズはSmart 3Dで再利用できますか?
PMLそのものをSmart 3Dで動かすことはできません。Smart 3DではVB.NET/C#を使ったカスタムコマンド開発が基本になります。ただし、PMLで実現していた業務ロジック(自動図面生成・属性一括編集など)は、Smart 3Dのカスタムコマンドやshinsei-3dのようなアドオンで同等以上の機能を再現できるケースが多くあります。
Q6. ユーザー教育期間はどのくらい必要ですか?
まったくのゼロからスタートする場合、基本操作の習得だけで1〜2ヶ月は見ておいたほうが良いでしょう。shinsei-3dのようにPDMS/E3D相当の操作感を再現するアドオンを併用すると、習熟期間を圧縮できます。プロジェクト本格投入までの並行運用期間で、教育負荷をどう吸収するかが計画上の鍵です。
※プロジェクト規模・既存スキルレベル・教育体制により変動します。
Q7. 配管カタログの管理や整合性チェックについて、Smart 3D移行後はどう運用すべきですか?
shinsei-3dには配管カタログ・スペックを統合管理するアプリ(Catalogue&Specification)があります。複数のExcelファイルを1つのユーザーインターフェースで管理でき、値の不整合を自動検知する機能を備えています。PDMS/E3Dから移行する際のカタログ再構築フェーズで導入すると、レビュー工数の削減と、属性ミスの構造的な抑制を同時に実現できます。
※辰星技研の現場エンジニア向けQ&Aで実際に寄せられた要望に基づくアプリです。
PDMS/E3D資産を活かしながらSmart 3Dへ移行するために

PDMS/E3DからSmart 3Dへの移行は、単なるソフト乗り換えではなく、社内標準・カタログ資産・人材スキルを次世代CAD環境に再構築する経営判断です。本記事の要点を3つに整理します。
- 移行の主要ドライバはライセンス費用: 機能差ではなく、長期TCOが判断軸
- 最大の工数源はカタログ再構築とユーザー教育: ここを甘く見積もると計画が破綻する
- アドオン活用で移行コストは大幅に圧縮できる
「PDMS/E3Dの資産をどう活かすか」を起点に設計するか、「Smart 3Dを社内標準にどう適合させるか」を起点に設計するか。どちらの視点でも、移行コストを下げる選択肢を持っているかどうかで、プロジェクトの成否は大きく変わります。
辰星技研では、Smart 3Dの標準機能では時間がかかる工程を集約したホワイトペーパー「プラント配管設計の時間泥棒TOP10|削減可能時間一覧」を公開しています。配管設計のどの工程に何時間かかっているのかを可視化したい方は、あわせてご活用ください。
参考文献
- AVEVA E3D Design 公式ページ|AVEVA(Schneider Electric)
- AVEVA PDMS 公式ページ(サポート終了情報)
- AVEVA Database Types 公式ドキュメント
- Intergraph Smart 3D 公式ページ|Hexagon
- Intergraph Smart Reference Data 公式ページ|Hexagon
- エンジニアリングITアンケート2023(業界調査発表元)|ENN-net
- shinsei-3d公式サイト|辰星技研株式会社
- YouTube動画|【開発者が語る】Smart 3Dの配管設計、数時間の作業が”数分”になる革命的アドオン(辰星技研公式チャンネル)